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Orgelsonate Nr.19 in g-moll, op.193

オルガンソナタ第19番 ト短調 作品193

Präludium; Provençalisch; Introduction und Finale


fg.1 via BSB MUS.ms, 4661 p.12
fg.1 via BSB MUS.ms, 4661 p.12
fg.2 via Carus: 50.239 p.211
fg.2 via Carus: 50.239 p.211
fg.3 via BSB MUS.ms, 4661 p.30 ①の2小節を②のように修正している
fg.3 via BSB MUS.ms, 4661 p.30 ①の2小節を②のように修正している
fg.4 via Carus: 50.239 p.229 赤囲みに修正されている
fg.4 via Carus: 50.239 p.229 赤囲みに修正されている

第二楽章「Provençalisch プロバンス風」で引用されているギヨーム・ド・マショーの歌曲「J'aim la flour de valour 私はその花を愛する」

 ラインベルガーの作曲するときは、多楽章を構成する作品は、第一楽章の頭から一気にスケッチを書き始め、最後まで書き終わった後、清書をまた第一楽章から書き始める癖がある。ただしこの原則も晩年には - 例えば『ニ短調のレクイエム 作品194(1900年)』や『イ短調のミサ曲 作品197(1901年・絶筆)』 で確認されている - 各楽章のスケッチが終わった時点で、それぞれの清書を開始している。この『オルガン・ソナタ19番 ト短調 作品193』も第一から第三楽章までそれぞれのスケッチのあと清書を手がけている。この頃はだいぶ体力が衰えていた時期であり、自分が作品を完成させる自信がなかったのかもしれない。

 

 第一楽章「Präludium」のスケッチは1899年4月6日に終了し、その日のうちに清書も終わらせている。第二楽章「Provençalisch」は4月17日にスケッチ・清書が翌18日。第三楽章「Introduction und Finale」は4月29日にスケッチ・同日に清書を完成させている。出版は同年中にフォアベルクから刊行された。

 

 ラインベルガーは完成させた清書をさらに修正することは少ないが、第一楽章と第三楽章の結部をそれぞれで大きく修正を行っている。

 

 第一楽章はfg.1のように当初終結部のAdagio moltoの2小節前(221-222小節目)の右手は16分音符3度の進行でメロディが書かれていたが、三連符の16分音符2度進行のメロディに書き直すよう指示(fg.1の赤丸囲)があり、修正されている(fg.2)。また最終楽章(第三楽章)の結部は2小節少なく242-243小節目は244-245小節目が追加修正されている。(fg.3とfg.4を参照)

 

 そのほかにも清書上で8カ所修正するように指定されている。第一楽章では43小節目と127小節目。第二楽章は44-57小節目と106小節目。第三楽章では4カ所、22小節目118-119小節目・121-122小節目・155小節目が細かく修正されている。

 

 ラインベルガーのオルガン作品の特徴としては過去のコラールなどからの引用がほとんどないのだが、このソナタでは第二楽章「Provençalisch プロバンス風」の冒頭12小節でギヨーム・ド・マショーの歌曲「J'aim la flour de valour 私はその花を愛する」を主題として引用している。

 

  ラインベルガー当時対位法の大家と言われていたが(あまりにも対位法にこだわるため、学生から「フーガ馬鹿」と揶揄されていた)、最後から3つのオルガン・ソナタ(18-op.188、19-op.193、20-op.196)では得意のフーガを採用していない。晩年のこと故、創作能力が衰えたのではないかと言われることもあるが、『大学序曲 op.195』で6つの主題を使用したフーガを展開しフーガ馬鹿の面目躍如となっていることから、意図的にフーガを封印していたことがうかがえる。

 

 作品はカール・シュトラウベの師匠でヴィルヘルム皇帝記念教会オルガニスト、ハインリッヒ・レイマンに献呈された。シュトラウベ自身にも楽譜は送られている。

 

 カール・シュトラウベはラインベルガーに「あなたの第19番ソナタは私の観客に相当な印象を与えました。ことにバラード風の第一楽章は観客からとても賞賛されました」と手紙を送っている。

 

 ハーヴェイ・グレイスが伝えるところによると、ウェストミンスター大聖堂のオルガニスト兼デイリーテレグラフ誌音楽評論家・G. J. ベネット博士(1831-1911)曰くオルガンソナタ19番は「後期の4曲の中でも最高のランクである。それはもっとも長く(30ページ)、そして非常に難しく、簡易で俗受けしない、大胆な荒々しさ - 本当に厳しい - 型式」なのだそうである。同曲は実際ファオベルク初版が30ページ、Novello版が32ページ。Carus版は30ページあり、Novello版・Carus版全てのソナタを見渡しても30ページの規模に達するものはない(ごめんなさい初版は全部目を通してないです)。超重量級の作品である。

 

 WebMaasterはこの19番が大好きである。ものがなしい第二楽章。そして圧巻の第三楽章。まず導入部の21小節目3拍目からの「に音(D)-と音(G)-変い音(B)-ホ音(g)」による、Posaune(トロンボーン)を含んだ裸のペダルによる重低音にしびれちゃう。そして41小節目からのCon moto推進力。まるでちりばめられた星々と星座の海を駆け抜けて公開しているかのような空を翔る船を想像してしまう。和音の洪水のようなMaestosoをはさんで5回繰り返されるこの主題がもうたまらん!!! 皆さん機会を捉えて聴いてみてね (^_-)-☆