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Messe in F op.117

Missa Sanctissimae Trinitatis

全集第二巻第一部混声合唱ためのミサ曲集2巻 Carus-Verlag 50.202所収。「Missa Sanctissimae Trinitatis」となっている
全集第二巻第一部混声合唱ためのミサ曲集2巻 Carus-Verlag 50.202所収。「Missa Sanctissimae Trinitatis」となっている
Carus-Verlag 50.117。「Missa in honorem Sanctissimae Trinitatis」となっている
Carus-Verlag 50.117。「Missa in honorem Sanctissimae Trinitatis」となっている
直筆清書。ト音記号ではなく、各パートハ音記号(ソプラノ・アルト・テノール記号)で書かれている。BSB Mus. MS. 4589
直筆清書。ト音記号ではなく、各パートハ音記号(ソプラノ・アルト・テノール記号)で書かれている。BSB Mus. MS. 4589

 Messe in F op.117はとても資料が少なく解説がしづらい。原曲は1880年4月24日と25日の二日間という非常に短い期間で下書きが行なわれ、浄書は5月2日に書き上げられた(復活祭の第4日曜日)。数日のちに楽譜出版社フォーアベルクに送られた。フォーアベルクは10月までに印刷楽譜を教会や州立図書館に収めている。今日においては以上の事柄以外に、伝わっていることがない。宮廷教会には単独での演奏の記録は残されておらず、演奏の評論も残っていない。ラインベルガー自身が定期的に自作品を演奏していることを鑑みれば奇妙なことである。

 Messe in F は「Missa Sanctissimae Trinitatis 聖三位一体のミサ」という副題も持っている。清書総譜の表紙には「op 117 / Neue 4stimige / Messe (F dur) / Smae Trinitatis」と書かれている。妻ファニーがまとめたカタログでは「Missa Stmae Trinitatis」と表記されている。初版出版を行ったフォーアベルクからの楽譜の表紙から「Missa Sanctissimae Trinitatis」表記される。現行の楽譜出版を行ってるCarus社の全集では「Missa Sanctissimae Trinitatis」であるが、単行本楽譜では「Missa in honorem Sanctissimae Trinitatis 聖三位一体を讃えるミサ」と記載されている。その他この曲にはMesse in FのタイトルのほかにCarus社の単行本楽譜には「Missa brevis in F」とも題されている。ただし全集第2巻に収録されている分には記載が無い。また初版出版を行ったフォーアベルクからの楽譜の表紙には記載が無い。統一性がないことにより、これらの副題は出版社主導で付けられた模様なのでMissa Sanctissimae Trinitatis」が正式な題名なのではないだろうか。各楽章の冒頭部が3度音程の上昇(Benedictusのみ下降している)しているところに起因しているのかもしれない。あるいは完成して約一か月後、6月上旬の三位一体の祝日を見越したのか知れない。その理由は明確ではない。なおこのモチーフはグレゴリア聖歌の「Missa in Dominicis Adventus」の第2キリエ、または「Missa in Dominicis Adventus et Quadraragesimae」から引用されている模様である。

 やはりこの曲もラインベルガーの悪い癖として、GloriaとCredoにいくつもの単語の欠落が存在している。また両曲のイントナチオンに作曲されていることも当時のセシリアニズムからの非難をまねていた。