オルガン系:その他編

このコーナーはオルガン作品の単発録音をあつかう。ラインベルガーの作品はバッハ、メンデルスゾーン、ブラームス、リスト、その後のレーガーやヒンデミットなど主要な作曲家とよくカップリングされているが、その中でも重要と勝手にWebMasterが思ったものを扱う。というか、持っているものだけ。収録されているディスク全部はさすがに扱えない。誰かちょうだい。


Rheinberger, Guilmant, and their American Pupils
レーベル:Raven
Disc No.:OAR-410
演奏:Martin Weyer (org)
録音年月日:不明
ロケーション:St. Joseph's University, Philadelphia
収録曲:
  Three pieces from The Mescellaneen
    Aufschwung
    Abendruhe
    Finale
  Fugue in F minor(1867)
  Fughetta in E-flat minor(from op.123)

 ラインベルガーは本人の人徳によって、非常に友人や弟子たちに恵まれた。特にオルガニストではフランスのアレクサンドル・ギルマン、アメリカ出身の弟子、パーカーとチャドウィックは英語圏でのラインベルガーの人気を支えてくれていた。

 そんな3人と、ギルマンの弟子たちのオルガン作品、そしてラインベルガーの小品を納めたディスク。2枚組。演奏は全集校訂者・マーティン・ウェイヤー。

 特にパーカーやチャドウィックたちのラインベルガーとの関わり部分の解説が非常に面白い。「先生の作品は大人気でアメリカでもしょっちゅう演奏されていますよ」と手紙を出しているのは貴重な記録。



レーベル:THOROFON
Disc No.:CTH 2090
演奏:Martin Weyer (org)
録音年月日:1990/Aug
ロケーション:Church St. Laurentius in Schaan/Liechtenstein
収録曲:Sonate Nr.16 gis-moll op.175

Lachner : Sonata f-moll op.175

Ludwig Thuille : Sonata a-moll op.2

John Ebenezer West : Passacaglia "In Memory of Josef Rheinberger"

Alan Gibbs : Celebration of Josef Rheinberger

 泣いてションベンちびろ。このディスクはすごいぞ。ラインベルガーのラインベルガーによるラインベルガーのための作品集と言っていい。なんせ、師匠のラッハナーのソナタ、ラインベルガーのソナタ#16。弟子・ルートヴィヒ・トゥイレによるラインベルガーの影響力大なソナタ。さらに次がすごいイギリスのオルガニストにして音楽評論家・J.E.ウェストによる『パッサカリア ラインベルガーの思い出に』。そして1932年生まれの現代の作曲家・ギップスによる生誕150周年を記念した『ラインベルガーを祝賀して』。演奏はCarusの全集でオルガン部門を校訂したマーティン・ウェイヤー。収録場所はリヒテンシュタインの都市シャーンの教会とラインベルガーのづくしなわけだ(できたらファドゥーツの聖フローリン大聖堂で集録せしてくれたら良かったのに (・3・))。

 収録曲の内、最後の2曲はソナタ#8のパッサカリアに影響されまくり。この曲の破壊力のすごさがよくわかる。

 特にギップスのそれは全編にわたってパッサカリアの主題が引用されまくっているが、そのほかにかなりメロディーが引用されている模様。そこかしこにどこかで聴いたことがあるフレーズが散見する。

 またウェストの『パッサカリア』は気に入ってしまったため、楽譜を入手し、ただいまWebMasterは(その主題だけ)練習中。そのうちおつきあいのあるオルガニストに示して演奏してもらいたいと思っている(人´∀`)



レーベル:Oehms Classics
Disc No.:OC 622
演奏:Andreas Gotz (org)
録音年月日:2005/Oct/17-21
ロケーション:München Odeon-Orgel
収録曲:Orgelsonate Nr.9 b-Moll op.142
他 Bruckner, Goller,Liszt, Reger

 なんら変哲もないオムニバスCDに見えるが、ロケーションが特殊。ここはラインベルガーゆかりのミュンヘン・オデオンホールでの収録。オデオンホールと言えば、ラインベルガーが数々の演奏会を開き、自作の発表も行った場所。ちゃんと統計は取っていないが、資料を読むとオケ作品から合唱曲まで「またオデオンでかよ!」とばかりに出てくる場所。そこでのラインベルガーゆかりのロマン派作曲とのオルガン作品集は魅力でしょ(でもこの時代の音楽家で関わりのない人たちなんていないけどね)。

 ソナタ#9はAmadeus社の楽譜を使用。



レーベル:Querstand Record
Disc No.:VKJK 1302
演奏:Peter Kofler (org)
録音年月日:2013/May
ロケーション:St Michoel Zu München
収録曲:
    Sonate Nr.7 in f moll, op.127
    Sonate Nr.8 in e moll, op.132
    Neun Stücke für die Orgel, Op.129(Reger)

 このディスクはラインベルガーとは切っても切れない教会、ミュンヘンの聖ミハエル教会の大オルガンを使用してる。なんせまだ20才前後の彼がオルガニストを勤めていたし、後に妻のファニーの遺言により、大オルガンが寄贈され、ラインベルガー自身が検品を行った場所。ラインベルガーとっては特別な場所である。これに匹敵するのは故郷ファドゥーツの聖フローリン大聖堂のオルガンぐらいか。

 だが、残念なことはこの聖ミハエル教会は第2次世界大戦のミュンヘン大空襲により、オルガンごと灰燼に帰しており、戦後再建されたもの。ゆえに正確に言えばちょっとアレなんだけどね。でもやっぱそんな教会のオルガンで演奏するのは企画として重要だよね。

 他ラインベルガーの心の弟子、レーガーも収録。



風琴事始 レーベル:ALM RECORDS
Disc No.:ALCD-1106
演奏:椎名雄一郎 (org)
録音年月日:2008/Sep/5-6, 8
ロケーション:水女子大学・長崎


収録曲:Organ Sonata #4 a-moll op.98
他 Bach, Mozart, Franck, Vierne

 長崎県の活水女子大学所蔵のオルガンを使用。オルガニスト、活水女子大学准教授・椎名雄一郎の録音企画の一環。ソナタ#4を収録。普通この手の単発ものはきりがないので買わないことにしているのだが、日本人でラインベルガーをまともに吹き込んだ人は見当たらないので、購入。でもあまりよくない。テンポが速くてせせこましく軽い。♩=93ぐらい? この速度はから考えるに、Forberg社の初版、carus社やAmadeus社の楽譜ではなく、Edwin H. Lemareが校訂した楽譜(Schirmer社またはMaster Music社)を使用しているのか?(前3社は♩=80、Lemare校訂譜は♩=96。ちなみに第三楽章の速度も速めに指定されている。椎名のテンポは♩=108ぐらいだからLemare校訂譜(♩=112)に近い) 例えば冒頭の主題、2小節目3拍目のの指使いなど、軽くてもうそこでダメ。テンポが速いと言えばイニッヒの演奏の方が早いんだけど、それに比してもすごく間の取り方も悪いし、第二主題の「tonus peregrinus」にひっそりとした神々しさがない。3回繰り返されるこの第二主題提示部のレジストリーの変化も乏しい。第三楽章でも、半音階進行の後の第一楽章の第一主題の力強い再提示、そしてさらに力強い世界を浄化するがごときの「tonus peregrinus」が歌われるのだが、テンポ設定も気にくわなければ、レジズトリーもなんだか物足りない。なんていうか、技巧的すぎるように思われる。

 あと残念なことは解説が引用される「tonus peregrinus」ぐらいまでしか触れていないこと。どうしても字数に制限があるからしょうがないのだが、第2楽章のIntermezzoのその後の転用について触れていない。そこまで触れてやっと合格。ファニーの臨終まで踏み込みのは無理があるか。一度オルガニストに吹き込んだ時点で、どの辺まで自覚していたか聞いてみたいものである。

 あと、オタクちゃん的には大バッハの『人の望みの喜びよ』はデュルフレの編曲バージョンではなく、ハーヴェイ・グレース版だとうれしかったのだが。ま、普通知らないか。




Pieces, Vol. 1
レーベル:cpo
Disc No.:999 041-2
演奏:Wolfgang Stockmeier (org)
録音年月日:1988/Sep
ロケーション:the Basilica of St. Anthony, Rheine
収録曲:Tweive Character Pieces op.156
  Tweive Fughettas op.123b, 1-6


Pieces, Vol. 2
レーベル:cpo
Disc No.:999 041-2
演奏:Wolfgang Stockmeier (org)
録音年月日:1988/Sep
ロケーション:the Church of St. Josef, Osnabrück
収録曲:Tweive Meditations op.167
  Tweive Fughettas op.123b, 7-12


Pieces, Vol. 3
レーベル:cpo
Disc No.:999 089-2
演奏:Wolfgang Stockmeier (org)
録音年月日:1989/Sep
ロケーション:Lutheran Church
収録曲:Tweive Mescellaneen op.174

 ラインベルガーは代表作のオルガンソナタ以外にも、8つの小曲集、100曲弱もの作品を出版している。その他、opusはつけなかったが、発表したものの後生にopなしで出されたものもあるので100曲を優に超えている。これはオルガンの作曲家としても特筆に値する。なぜなら大バッハ以降それだけのレパートリーを供給した作曲家はいないと言っていい。大バッハ以降で最も重要なオルガン曲の作曲家はメンデルスゾーンぐらいしかいないのである。えっリストもブラームスもいるだろ、シューマンもいるしロイプケとかも。と言うかもしれないが、とにかく量と質が違うのである。オルガニストにとってはこれほど重宝するデストリビューターはいないのである。

 だが日本(とは限らないが)のオルガニストはオルガンソナタにしか目が行かないようである。検索しても検索してもオルガンソナタ。WebMasterは山頭火の気分である。

 このシリーズはドイツのこれまたオルガンものを結構出してるcpoレーベルの小曲集シリーズ。でもどうも企画が頓挫した模様で、半分の4チクルスしか収録されていない、残念です。

 WebMaster的にはお気に入りの『12の性格的作品集 op.156』(#5のVisionとか#7のIn memoriamなんか好き)があるから取りあえずいいかな。



レーベル:CPO
Disc No.:999 351-2
演奏:
    Gotthold Schwarz (Br)
    Jürgen Sonnentheil (Organ)
録音年月日:1995/May 1996/Jul
ロケーション:Cuxhaven St. Petri Church
収録曲:
    Organ Sonata No.2 op.65 In A flat major
    Six Religious Songs op.157
    Organ Sonata No.4 op.98 In A minor
    2 Song from op.128 "Elegiac Songs"

 このディスクは上のストックマイヤーのシリーズとは別のものだが、ライナーノートのデザインは少し似通っている。収録されているのはオルガンソナタ2曲に、バリトンとオルガンによる宗教的歌曲。最初の『6つの宗教的歌曲 op.157』はWebMasterのファイバリエットの一つである。もし機会があるなら一度歌ってみたい。次の『悲歌 op.128』から2曲。これは元々4曲の作品だが少し特殊で、ここに収められた最初の二曲は低声(バリトン、バス、アルト)のための声域で、残りの3曲目と4曲目は高声(ソプラノかテノール)用の声域で構成されている割に珍しい歌曲集なのである。先のop.157とともにこれもまたWebmasterのお気に入りの一つだ。