器楽系:オーケストラ編 その1

レーベル:CHRISTOPHORUS
Disc No.:CHE 0153-2
録音年月日:

 1993/Jan(1-2)

 1994/Jan(3-8)

 

 

指揮:CHE 0153-2

合唱:Chor der St. Hedwigs-Kathedrale Berlin
オケ:Brandenburgisches Staatorchestrer Frankfurt

 

 2枚組CD。オーケストラ作品集。少し解説しますと、右に掲げた収録曲のうち、最初の2曲がDisc 1に残りがDisc 2に収められている。アンダーライン付きのものは男声合唱とオーケストラ作品のものである。個人的にはFantasia op.79』があるんだったら、この2曲の男声合唱よりも『パッサカリア op.132b』など編曲物も収録してもらいたかった。ネットで1枚ずつ販売されているのをたまに見かけるが、こちらの2枚組の方が入手しやすい。

収録曲:

  1. »Wallenstein« op.10 - Symphonisches Tongemälde für großes Orchester
  2. Vorspiel zur Oper »Die Sieben Raben« op.20
  3. Ouvertüre zu Shakespeares »Zähmung der Widerspenstigen« op.18
  4. Das Tal des Espingo op.50
  5. Fantasia für Orchestrer op.79
  6. Ouvertüre zu schillers »Demetrius« op.110
  7. Hymnus an die Tonkunst op.179
  8. Akademische Ouvertüre op.195

  1. 『ヴァレンシュタイン』管弦楽のための交響的絵画 op.10 - 初稿1866年/改訂1868年。全集の解説によればアメリカでは人気が高く、しばしば演奏されるとの事だが、本当かそれ? 1. 「前奏曲」 2. 「テクラ」 3. 「ヴァレンシュタインの陣営」 4.「ヴァレンシュタインの死」と4楽章構成。ヴァレンシュタインは30年戦争におけるボヘミアの傭兵隊長。シラーが彼の生涯を戯曲に表し、本交響的絵画のヒントとなっている。先覚者としてはスメタナもヴァレンシュタインをテーマに交響詩をものにしている。1866年(27才)4月に脱稿。5月にカール・ライネッケによりライプチヒ・ゲンバントハウス・オーケストラにて演奏される話もあったが流れてしまう。11月26日ミュンヘン・オデオンホールにて作曲者自らのバトンで初演され、大成功を収めたことにより、ラインベルガーは作曲家としての地位を得ることになる。そのサブタイトルからして、初期のころのラインベルガーは、絶対音楽よりもリストに代表される交響詩・標題音楽を志向が垣間見られる。「標題音楽としても優れているが、絶対音楽としてもみなせる」と当時評され、エドゥアルト・ハンスリックにも評価された。第二楽章の「テクラ」はヴァレンシュタインの娘であるが、そこに使われる主題は後の妻ファニー・フォン・フォッフナースに対する愛の告白である。第3楽章の「ヴァレンシュタインの陣営」に作曲者も自信があったのか、独立して出版されている。
  2. 歌劇『七羽のカラス op.20』前奏曲。初稿1863年/改訂1869年。ドイツの民話に基づいたモーリッツ・フォン・シュヴィントによる同名絵画に触発され作曲。青年期のラインベルガーは野心と才気あふれ、作曲家として一本立ちしようともがいていたが、1864年(25才)同曲の初稿による上演はミュンヘン及びカールスルーエにて拒否された。唯一"前奏曲"のみ11月に上演が出来、好評を博す。このことにより、歌劇の製作がいかに難しいかを肌に感じたラインベルガーはオペラ研究の為、12月から1867年まで宮廷国立歌劇場のコレペティトールも務めることにする。この間ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』世界初演にかかわることになる。68年歌劇場での経験をもとに改訂を行い、翌年5月23日に改訂版の初演が行われ、大成功を収めることとなる。この"前奏曲"は非常に好評を得、各地で演奏された。代表的な例としてはブラームスにより、1874年ウィーンにて演奏されている。
  3. 演奏会用序曲『シェークスピアの"じゃじゃ馬ならし"』。1868年9月20日に完成。63年の『七羽のカラス』この66/68年に『ヴァレンシュタイン』、65年と68年の二つの劇場用付随音楽と非常に舞台づいているとともに、標題音楽指向があったことがうかがえる。
  4. 男声合唱と大オーケストラのためのバラード『エスピンゴの谷』。ロマン派の時代市民階級の台頭とともに、リーダーターフェル、リーダークランツといった具合にドイツ各地で男声合唱が盛んとなっていた。元来ラインベルガーは男声合唱に興味を示していなかったが、1869年(30才)4月にミュンヘン学生合唱協会によるワーグナーの『使徒の愛餐』を聴き衝撃を受ける。妻のファニーの勧めもあり、パウル・ハイゼの同名バラードに作曲を行う。翌月に歌劇『七羽のカラス』の初演を控え(23日)、かなり忙しかったはずだが、5月3日には完成してることから、その関心の度合いがうかがえる。以後無数の男声合唱をものにし、ドイツ・ヨーロッパは言うに及ばずアメリカでも歌われ、20余りの団体から名誉団員として慕われた。
  5. 『幻想曲 op.79』。もともとは四手連弾ピアノ用作品のトランスクリプション。ラインベルガーに限ったことではないが、単独単独器楽曲のうち何曲かの自信作を編曲している。代表的なものはオルガンソナタの単独楽章をオルガンとヴァイオリンなどによるアンサンブル作品にしてるものだが、この曲のように丸々オーケストラ用にアレンジしたものもいくつか存在する。代表的な作品としては『パッサカリア op.132b』である。本曲の原曲は1874年の4月に完成。このオーケストラバージョンは2年後の1876年の11月から12月にかけて作られた。
  6. 演奏会用序曲『シラーによる"デメトリウス" op.110』。ムソルグスキーが『ボリス・ゴドノフ』で扱った、シラーによる同名戯曲を基にしている。1878年4月に完成。1879年10月30日にてミュンヘンではなく、ライプチヒ・ゲバントハウスで初演が行われたことは、ライベルガーの名声の高さを示すものである。
  7. 『音楽芸術への讃歌 op.179』。時のバイエルン王・ルードヴィッヒ2世直々の手により、1887年からラインベルガーは宮廷楽長に任じられたが、その職はオルランド・ディ・ラッソを筆頭に由緒ある重職であった。ヘルマン・リンクの詩に1894年3月から4月にかけて作曲されたこの曲は、1894年6月14日ラッソの没後300年式典において初演された。6つの男声合唱団と軍楽隊の伴奏により、ラッソの『マニフィカト』とともに演奏された。
  8. 『大学序曲 op.195』。ラインベルガー最晩年の作品の一つ。1899年3月17日誕生日に合わせて、ミュンヘン大学哲学部より名誉博士後の授与の打診が前年より教え子からなされていた。その返礼として作曲。副題にすでに示されてるが「6つの主題による大オーケストラ」のためのフーガを成しており、当時対位法の大家として名を成していた作者の面目躍如となる作品である。