器楽系:ピアノ編
ピアノ曲全集
レーベル:Carus
Disc No.:83.365
録音年月日:1990-2003
演奏:
Jürg Hanselmann (p)
Sandra Hanselmann-Kästli (p)
演奏者のハンゼルマンはリヒテンシュタイン出身のピアニスト。ラインベルガー故郷、ファドーツの生家(それは幼少に頃にオルガニストを勤めた聖フローリン教会の隣)は、今現在音楽学校となっているそうだが、ハンゼルマンはそこに学び、毎日ラインベルガーの胸像の前を通い、尊敬してたとか。連弾や2台ピアノ物は奥さんのサンドラと共演している。
とにかくある。全部ある。作品番号がつけられたオリジナルピアノ曲はすべてそろっている。無いのはトランスクリプション(ピアノ物だとop.7,2、op.11,2、op.14,13、op.39,2とか。しかもこの辺の編曲は飛び切りの理由があるのに収録していない。夫婦で演奏すればよかったのに。出版されたものがトランスクリプションだったりもする。ほとんどが全集の編纂前の録音だからやむを得ないか。でもおんなじCarusなんだけど。オケ・オルガン物まで含めるのは無茶か。バッハやモーツアルトのアレンジものはまた別ジャンル)ぐらい? 10枚組のCDは消化するだけで、もう大変。
オルガニストしてのラインベルガーの評価は高いが、実は20代前半ぐらいまでは、新進気鋭のヴィルトオーゾ・ピアニストだったことはあまり知られていない。ハンス・フォン・ビューローは彼をピアニストとして最高級の賛辞を送った。そんな彼が膨大な量のピアノ曲を残すのは何ら不思議ではない。だが問題はあまり面白くないことだ。演奏がいまいちなのか、曲そのものがありきたりすぎるのか?
ただ中にはきらりと光るものもあり、op.66の『三つの演奏会用練習曲』の凄さはびっくりしちゃうぐらい、WebMasterはお気に入りだ。またop.113の『左手用練習曲集』などは、彼の右手人差し指の障害から生まれたのか、 興味深い。それ以前にこの曲を左手だけで引くの? 可能なの?
あと面白みを感じるのは連弾と2台ピアノ物。もう少し立体感のある演奏・録音(4手で弾いているって感じが薄い)だったらさらに良かったけど、とっ~ても面白い。
レーベル:THOROFON
Disc No.:CTH 2157
演奏:Holst Göbel (p)
録音年月日:1989, 1990
収録曲:
Improvisation über Motive aus der "Zauberflöte" op.51
Sonate Nr.2 in Des-Dur op.99
Thema mit Veränderungen op.61
ピアニストのホルスト・ゲーベルはラインベルガーの室内楽全集のプロデューサーで、ピアノが絡む作品を全部担当している。で、彼がピアノ独奏曲も手掛けるのは至極当然なのだろう。上のハンゼルマンは消化するだけで大変なのだが、こうやって単発物を改めて聴くと、なんとなくわかったような気になってくる。『魔笛の主題による即興曲』とかを聴いていると、「あー、このフレーズ知ってるな~」とうれしくなっちゃう(^ν^)。『ソナタ2番』も何度か聴いていると、面白くなってきたな。なんか鬼気迫る演奏で、異常な緊張感を醸し出している。ハンゼルマンの演奏より100倍おもしろい。でも『主題と変奏』はどこがどうバリエーションになっているのかよくわかりません(>_<)
レーベル:Centaur
Disc No.:CRC 2648
演奏:Antonio Pompa-Baldi (p)
録音年月日:2002/May/29-31
収録曲:
Piano Sonata #1 C-dur, op.47
Piano Sonata #2 Des-dur, op.99
Piano Sonata #3 Es-dur, op.135
ピアニストのポンパ-バルディ曰く
「ラインベルガーって今までピンとこなかったんだ。オルガンという事では知っていたけど。でもちょっと調べたら、ピアノ曲沢山あんじゃん。教えてる音楽院の図書館に楽譜いっぱいあって試してみたら、すんごいおもしろいじゃん。で、ケンタウル・レーベルでCD出さないかと言われて、俺これやってみて~、って言ってこのCDが出来たんだ」
何が何でも録音するんだ的ハンゼルマンよりものびのびと演奏している印象。
CDの収録時間の関係なのだろうけど、4曲あるピアノソナタの内、3番までを入れている。できたら4番も聴きたいな~。このディスクは多分もうCDでは手に入らないです。iTunesとかMP3でのデータで手に入れてちょ。
レーベル:Romantic Discoveries Recordings
Disc No.:RDRCD 78
演奏:John Kersey (p)
録音年月日:2010
収録曲:Passacaglia: Free concert transcription of the final movement of the Organ sonata op.132
上のハンゼルマンですら収録しなかった、オルガンソナタ#8 ホ短調, op.132の最終楽章・Passacagliaのピアノ1台バージョンを収録。世界初録音。ラインベルガーは自身のオルガンソナタ2~17までをピアノ連弾用にアレンジしているが、ここに収録されたPassacagliaは唯一ピアノ1台バージョンが作られた異例の作品。このPassacagliaは相当の自信ががあった模様で、のちにオーケストラ用にも編曲している。一説にはブラームスの交響曲4番はこのPassacagliaに触発されているという。事実Passacaglia(またはシャコンヌ)をオーケストラ作品にしたのはブラームスとラインベルガーが嚆矢ともいえる。
J. S. Bach : Glodberg-Variationen BWV 988, WoO 3
レーベル:SONY CLASSICAL
Disc No.:SICC 1267
録音年月日:2009/Apr/6-8
演奏:
Yaara Tal (p)
Andreas Groethuysen (p)
レーベル:Two Pianists RECORDS
Disc No.:TP1039213
録音年月日:20//
演奏:
Nina Schumann (p)
Luís Magalhães (p)
大バッハのゴルトベルク変奏曲をピアノ2台用に編曲したもの。ライベルガーは当時廃れつつあった、2台鍵盤用チェンバロのためのこの作品を、後世に残すために編曲。ただしこのような行為がアダとなり、ピリオド楽器派というか古楽原理主義者(?)からけちょんけちょんにけなされた。
ラインベルガーが20世紀になって忘れられた背景には、ワグネリアンでなかったことと、ピリオド派からのロマン派排除の動きなどが複雑に絡み、彼を時代遅れの二流作曲家とみなされた結果ではないだろうか?(実は1880年代頃には時代遅れとみなされていた模様なのだが)
1883年の春、3月29日から手を付け始め、5月12日に下書きが完成。5月22日に清書が出来上がる。28日に出版社のKistnerに送付し、10月26日に製本が届けられた。
バッハもそうだが、ラインベルガーを尊敬していたレーガーはこのランベルガーの編曲版を1901年から1914年にかけて、このバージョンを頻繁に演目に取り上げる。そして出版されてから約25年。1915年、自身がさらに解釈を交え、やはりKistnerから更に新しいバージョンを発表するのであった。