番外編:楽譜を読めない人たち

Rhapsodie H-dur, WoO 27


 今回は番外編で「困ったちゃん音源」ではなく「困ったちゃん楽譜」である。いや、実は楽譜そのものにはなにも困ったことが無い。それを取り扱った人たちが困ったちゃんなのだけどね。


 曲は『ラプソディー フルートとピアノのための 作品番号外27』。


 この曲はフルートの構造に一大革命をもたらしたテオバルト・ベームによるベーム式フルートに接したことにより触発され、1856年、17才の時(この頃すでに習作は80曲に迫ろうとしていた)に作ったJWV78を下敷きとしている。ベームはミュンヘンでに生まれ、同地で活躍したフルーティストであり、ラインベルガーと面識があったという。ほとんどの解説にはFriendという単語が見受けられるので、親しかったようである。のちに1898年、59才ともう晩年だが、改作を行いキストナーから出版された。野心あふれる若さと円熟の極みの頃の合作と言っていい。残念ながらこの曲は作品番号(opus)は与えられず、作品番号外- WoO 27 -と分類されてる。曲はロ長調でかかれ単一楽章である。約7分ほど。もう少し膨らませて『ホルンソナタ op.178』のように体裁を整えていたら、楽器の重要なレパートリーになっていたかもしれな....いやフルートはライバルが多そうだから無理かな (・3・)。また基本的にフルートのための作品なのだが、フルートパートはヴァイオリンで代用しても良い。これは当時ベーム管は新しい楽器でまだそれほど普及していなかったからではないかと、WebMasterは思っている。


 作品番号が与えられていないから、Carus社の全集にも含まれていないし、THOROFONレーベルの室内楽全集にも収録されていない誰も知らない曲である。しかし全集にこそ含まれていないが(もしかしたら私が持っていない巻の付録にあるのかもしれないけど)、Carus社からは単品で出版されているし、Kunzelmann社で先に復刻されていたり、ほか2社から出ているので、知っている人は知っている曲なのだろう。いや誰も知らないな、知ってたら以下に記したような事態は起こらない。


 でだ、WebMasterはこんなマイナーな曲が演奏されるという情報をネットで見つけたわけだ。ちょうどその日は仕事の関係でタイトなスケジュールだったのだが、やっぱりチケットをとって聴きに行ったわけですよ。喜び勇んでチケットを頼むときに一つ気がかりなことがあった。それは何かというと、主催者側の発表ではこの曲をop.27- 作品27と紹介しているのである。


 ?????(´・ω・`)?????? あるぇ~、27番はハ短調のオルガンソナタ1番じゃなかったっけ~? でだ、チケットを注文したときに「(リヒテンシュタインの)ヨーゼフ・ラインベルガーですか? それとも違うラインベルガーですか? 作品27はオルガンソナタ#1だから、WoO(作品番号外)27だから、なんか作品違う気がするんですけど?」と質問を出したんですよ。ここで暗に間違っていることを匂わせて、相手方に気づくようにしたつもりだったがそれがよくなかった。リプライメール「はい、ヨーゼフ・ラインベルガーで間違いないです。確認しました」との返事。まー、確認したなら間違いないかな、演奏会当日には修正されているだろうと、楽観視していたのが間違いの元。もっと突っ込めば良かったのだが.....


 でだ、演奏会当日小雨の中、WebMasterは演奏会場に足を運んでみた。かなり小さなホール。主役のフルーティストは業界の大物らしく、その弟子や楽器関係者とおぼしき人たちで満杯。たぶんほとんどが関係者。もらったパンフレットを読んでみて仰天。やっぱり「op.27」。もうね馬鹿じゃないのこの人たち。ちょっとググればop.27がオルガンソナタの1番だってわかるのに、そんな2秒で猿でもできることをやろうとしない。


WebMasterは楽器の知識が皆無なのだが、主催者はどうも有名なメーカーらしい(銀座のあそこじゃないよ)。主役の演奏者もどうも大物。加えてラインベルガーなんて音楽史的に重要じゃないから、誰も知らない作曲家。オルガンやホルン吹きでないと知らないのよ(あ、合唱をやってる連中は論外ね。合唱をやってる連中はいっさい勉強しないから)。そんでだ~れも知らないようなフルート作品。ここで堂々と間違いを出されたらどういう結果が生まれるのだろうか??


 わからなければWebMasterが説明しよう。誤った知識が世間に広まってしまうのであ~る。あの日開場は150人ほどの聴衆で満杯だったと思うが、全員にラインベルガーのop.27は「フルートとピアノのための」作品とインプットされてしまったわけだ。実際間違った情報で書かれたブログもあるし。もうね、WebMasterはちょっと演奏会ストップかけてやろうかと思ったけど、大人げないのでやめました。いや、演奏者のレクチャーもあったので、ぎりぎりまで訂正が入るの待ったのだけど、矢っ張りダメ。おまけにそのレクチャーで「奥さんのフランチスカ・ホックナースが死んでからは....」いったい誰のこと言っているのやら。氏ね馬鹿。固有名詞も読めないのかよ。後ろのピアニストに同意を求めて、そいつもうなづいてやがる。2人して馬鹿。


 もうね、本当に暴れて演奏会ぶっ壊してやろうかと思ったけれど、威力業務妨害で警察呼ばれたりしてその後のスケジュールに支障を来してはいけないので、思いとどまったのよ。しょうが無いからアンケートはなかったけどパンフにぼろくそに悪口を書いて主催者にたたきつけましたよ。

 画像は『ラプソディー』の楽譜。左がKunzelmann社で右がCarus社のもの。でだどうも左を使っためにop.27の大間違いをやらかした節がある。表紙に「ohne Opus27」と書いてある。まー、わかると思うが、「ohne」は「~なしに」とか「~を除いて」という意味な訳で、「作品外27番」であることを表す。この楽譜を使っているから間違ったんじゃないの? もう、おまえら専門家だろ。馬鹿じゃないの? いや、主催者があとで言い訳した来たことには「昔の海外のカタログの表記がop.27だったもので...」的に言い訳してきたのだが。でもね「27」という数字を使っているのはKunzelmannぐらいの物なのよ。CarusやZimmermann版はロ長調としてしか書いていないのよね。しかも主催者側のHPでは件のKunzelmannの楽譜のページに演奏者がうれしそうに解説を書いている。どう見ても同版にある解説を参考にしているとしか思えない(その証拠にこの楽譜はヴァイオリンに関して一切触れていない)。


 もうね、楽譜の表紙見ておかしいと思わないのが、WebmMasterに言わせればおかしい。彼らはエキスパートなのよ、素人じゃないんだから。あえてどこのだれがやらかしたかは言わないけど、ググるとこの件と思しきWebが出てくるので、興味がある人は検索してみるといいヨロシし(`八´)


 俵孝太郎の著書で、評論家・音楽家にはトンチンカンな解説がたまにあるから頭から信用するな的論評があるのだが、それを実感した演奏会であったわけだ。


レーベル:MSR Classics
Disc No.:MS 1126
録音年月日:1985/Sep/19
演奏:
    John Solum (fl)
    Irma Vallecillo (p)
収録曲:Rhapsodie

←こちら同曲を収録したCD。参考までに