Hymne op.35 讃歌 作品35

Wie lieblich sind deine Wohnungen

 『Hymne op.35 讃歌 作品35』は詩篇84「Wie lieblich sind deine Wohnungen いかに愛すべきかな、汝のいますところは」をもとにしている。テキストに異同があるが、いうまでもなくブラームスのドイツ・レクイエム第4楽章であり、意識していることは明白である。

 

 この曲は『スターバト・マーテル 作品16』に続いて2番目に出版した宗教曲となる。最初の版は1870年に出版、31歳であり、オルガン曲同様、後々の宗教曲作曲・出版頻度からすれば意外に遅いと言っていいのではないだろうか。この曲には2つの出版された版、未出版の編曲と、いくつかのバージョンがある。

 

 まずラインベルガーは1865年12月25日に『Hymne 讃歌』を作曲した。これは前年の夏に書いた、無伴奏混声四部合唱のための6つの詩篇コレクションの一つとして作曲された。その際作曲家は詩篇84のみを独立して、女声合唱とハープまたはピアノのために『Hymne 讃歌』作品35として出版した。残り5つの詩篇は1872年に作品40とし出版された。

 

 作曲家は作品35として印刷する前に作品を見直し、いくつかの変更を加えている。イ長調から変ロ長調に移調。編成を女声4部合唱に変更。何小節か延長して前奏と後奏を持ったハープの伴奏を加えた。この版はミュンヘン・オラトリオ協会にて翌年この形で初演されている。

 

 この版はおそらくコプレンツ近郊のモーゼルヴァイス修道院修道女、ルイーゼ・アデーレ・ボンが1869年7月に新しい教会音楽を求めたことに端を発している。作品が清書されたあと、妻フランチスカが7月24日にシスター・ルイーゼに写しを送ると彼女は彼女は7月28日に大変感激した感謝状を送ってきた。7か月後、ラインベルガーは作品を出版することを決めた。1870年2月21日にフランチスカが複写を用意し、約10日後の3月3日、『Hymne 讃歌』はシーゲルに発送された。3月7日付で手数料に関し、ラインベルガーの条件を受け入れる(『ピアノトリオ 作品34』と『讃歌 作品35』の2つで60グルデン)返事があり、讃歌は「真夏に発行されます」とシーゲルは通知している。5月の終わりか6月の頭には『Hymne 讃歌』は印刷され、6月4日にラインベルガーの机に見本が到着した。

 

 13年後の1883年12月、ラインベルガーは「女声合唱、ハープとオルガンのためのラテン語バージョンの『Hymne 讃歌』」を『Quam dilecta』と題して制作した。これは未出版のままであったが、王立聖歌隊のレパートリーとなっている。さらに「ハープとオルガンのためのドイツ語版『Hymne 讃歌』」が書かれ、それは出版されている。この版はラテン語版とは対照的に、新しく書き足されたオルガンパートは任意である。この第2版には日付が無いが、1883年の以前に発行されたという。現在ではこの任意のオルガンパートを伴う第2版が流通している。

 

 伴奏部でハープをメインに使用している事からみても、ブラームスの女声3部合唱、ハープと2本のホルンための『四つの歌 作品17』を意識してるのだろう。