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Orgelsonate Nr.02 in As-dur, op.065

(Fantasie-Sonata)

オルガンソナタ第2番 変イ長調 作品65 "幻想ソナタ"

Glave・Allegro; Adagio espressivo; Finale

第一楽章冒頭部。冒頭小節に注目。Via carus/50.238
第一楽章冒頭部。冒頭小節に注目。Via carus/50.238

非常に似通っている賛美歌 Jesu meine Zuversicht


ファニーによるピアノ連弾版の下書き表紙 via 4739 a-2 p.103
ファニーによるピアノ連弾版の下書き表紙 via 4739 a-2 p.103
ファニーによるピアノ連弾版の清書冒頭部 via 4739 a-4 p.291
ファニーによるピアノ連弾版の清書冒頭部 via 4739 a-4 p.291

 マーティン・ウェイヤーは3年前(1868年)に作曲した『オルガンソナタ 第一番』と比較し、『第二』ソナタは円熟した傑作であり、「古典-ロマン派の作曲の形式的な問題に真剣に取り組」み、「素晴らしいロマン派オルガンの良い例として現れた」といっている。

 

 『オルガンソナタ 第2番 変イ長調 (幻想ソナタ) 作品65』は1871年の7月に作曲された。ブルース・スティーブンスはは7日から9日の3日間で作曲されたと言うが、典拠となる資料が他に見当たらないため詳しい日付はペンディグにしたい。直筆下書きから7日以降に作曲が開始されたことは判明している。清書は現存していない。

 

 第一楽章の導入部で、主鍵盤によって開始されすぐに第2鍵盤が呼応する2小節の主要動機は讃美歌「Jesu meine Zuversicht イエスは我自身」を想起させるが、ラインベルガー自身にどこまで引用を意識していたかは不明であるとウェイヤーは述べている。「讃美歌の旋律は実質的に彼のオルガン音楽には役割を果たしていない。彼のソナタが礼拝に使用の目的のためというよりもコンサート会場での演奏を目的としており、南ドイツのカトリックではあまり行われていなかった事実にある」のだという。また第一楽章は厳密に伝統的なソナタ形式にしたがっておらず、それゆえにおそらく副題を『幻想ソナタ』とした理由であると彼は言っている。また他の引用を行ったオルガン作品のように、作曲者自身すら引用の有無を記していない。ハーヴェイ・グレイスは「コラールの旋律は使用していいない」が「部分的にはコラールのスタイルは採用している」といっている。たぶんグレイスは気づいていなかったのではないだろうか。

 

 あまり知られていないが、ラインベルガーは自作のオルガンソナタのほとんどをピアノ四手連弾用に編曲している。録音再生機材の無い時代である。この時代多くの作曲家は自作の交響曲・管弦楽作品・室内楽作品をピアノリダクションを行い、自作品の研究とともに、作品普及に努めた。オーケストラが無くとものピアノ1台があれば再生可能であり、また独奏者だけでは表現しきれない面を四手連弾で補い、ロマン派の時代は大量のピアノ連弾作品が世に出されている。ラインベルガーもその例に漏れず、自作品のピアノ四手連弾リダクションを行った。そのなかにオルガンもソナタも含まれ、この『幻想ソナタ』がオルガン作品群のリダクションの第一号となる。

 

 ただし実際のリダクション作業はおそらく作曲家の監修・要望・相談の上、妻フランチスカ(ファニー)によって行われた。彼女は1872年11月21日の日記に書いている。「クルト(ファニーが夫につけたニックネーム)は現在彼のレクイエム(op.60)を連弾用に編曲している。私はオルガンソナタ(op.65)を編曲している」。弾用編曲の下書きは1873年1月17日の日付が残っている。同様に彼女の筆跡の清書の日付は1873年の2月である(日付までは確定していない)。原曲とピアノ四手連弾版は両方とも、1873年10月にミュンヘンのアイブルから出版された。