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Sechs Gesänge op.131

6つの歌 作品131


Ein Bild am Pfade

  小道の風景(Franz Alfred Muth 1839-1890)

Die alte Tanne

  古い樅の木(Franz Alfred Muth 1839-1890)

Der Gebirgsbach 渓流(Franz Alfred Muth 1839-1890)

Im Erdenraum

  この世の空間で(Franz Alfred Muth 1839-1890)

Märchenzauber

  おとぎ話の魔法(Franz Alfred Muth 1839-1890)

Gute Nacht

  おやすみ(Emanuel Geibel 1815-1884)

 

 3曲(正確には4曲?)ある女声合唱のためのミサ曲やいくつかの宗教曲は女声合唱団にとって大きなレパートリーとなっており、日本全国どこかで演奏されている。しかしラインベルガーの世俗曲に関してはほとんど目を向けられていない。正確には1、2度演奏された形跡はあるが、宗教曲ほど人気があるわけではない。

 

 ラインベルガーは宗教曲・オルガン曲の作曲家とみなされているだろうが、それはあまり正しくない。実際問題として出版された作品カタログ見ると、おびただしい数の世俗合唱曲・歌曲を作っている。最も力を入れているのは男声合唱。30歳になったころからにわかに男声合唱に興味を抱き、おびただしい数の男声合唱をものにしている。ドイツはおろかアメリカまでその人気が及んでいた。妻ファニーが「最も愛した楽器はオルガン」と言っているが、数字的には声楽の人なのである。ただし今日の女声宗教曲の人気を思えば、世俗女声合唱の比率は非常に小さく2曲しか作品番号を与えておらず、むしろ奇異に思うぐらいである。同時代人の作曲家からすれば非常に数が少ない。ラインベルガーはシューマンやブラームスのように女声合唱団を指導したことが無く、基本的にミュンヘン・オラトリオ協会という混声合唱団を指導していたこと。また先述の通り男声合唱への関心の度合いの高さに起因している。自発的には世俗女声合唱を書いてはいない。この二つの世俗女声合唱曲のうち、『Sechs Gesänge, op.131 6つの歌 作品131』をひとつとりあげてみたい。

 

 全6楽章からなるこの曲は、1881年9月に女声ボーカルカルテットのメンバー、イダ・ホルム・フリートレンダーから「評判の作曲家による新作」を求める手紙を貰ったことに由来する。「一肌脱いでいただけません? そしたら先生の作品で私たちのレパートリーが増えますの。それから私たちはソプラノ2声、アルト2声よ」と。この求めに喜々として応じた作曲家は9月19日にはガイベル(1815-1884)の『Gute Nacht おやすみ』を完成させている。翌年の夏の休暇中(1882年8月14日から20日にかけて)、文体の似た5つのテキストによって作品を膨らませた。ただしこれらの5曲はガイベルではなく、すべてムートによるものである。そして全6曲・作品131として同年クリスマス時期に出版された。この曲は女声カルテットのリーダーであり、作曲家にとっての音楽院での同僚の妻Anna Schimon-Reganに献呈された。初版楽譜の表紙には「女声または合唱のための6つの歌」とタイトルされており、まずソロ・カルテットによるアンサンブルを想定していることがうかがえる。また出版に際し、リハーサル用のピアノ伴奏を添えられた。

 

 この曲に限ったことではないが、ラインベルガーはゲーテ、メーリケ、アイヒェンドルフといったいわゆる文豪たちを自作用のテキストはあまり採用していない。彼はどちらかと言えば妻ファニーを含め、同時代人の詩人を好んで採用している。この曲でも最初に作った第6曲のエマニュエル・ガイベル(シューマンの『流浪の民』の作詞者)と残り5曲のフランツ・A・ムートも同時代人。ともにラインベルガーも出入りしていたミュンヘンの詩人サークル「クロコダイル」のメンバーであり、いずれも面識のある者たちであった。