参照される方々へ。弊サイトのデータをもとに解説を書かれる場合は出典として弊サイト名をお記し下さい。

Messe in A op.126

 ラインベルガーのミサ曲の中でも1、2を争う人気曲ではないだろうか? 2014年の首都圏だけでも4回演奏された。もともとヨーロッパでも人気があったのだろう、この曲は弟子のヨーゼフ・レンナー・ジュニアによって混声合唱化され、ロイッカルトから出版されている。需要があったのだろう。いや出版社があおっているのか? 余談だが、レンナーはop.172も混声合唱化し、やはり同社から出版している。閑話休題。

 

 右に掲げる文章は某女声合唱団のために全集第1巻・序文(Wolfgang Hochstein)同曲該当箇所の第一、第二段落目を訳したものである。もともとは全段落呼んでみたい方はご連絡を。

 

 実はこの曲を初めて聴いた時から冒頭のKyrieで、なにかとても違和感があった。それがなんなのかはわからなかった。とてももやもやするものがあった。10年近くもやもやしていた。楽譜購入してやっとそのもやもやがなんなのかがわかるようになってきた。大概のKyrieは「Kyrie eleison」、「Christe eleison」、そしてまた「Kyrie eleison」と三部構成をとる。しかしこの曲は「Christe eleison」の部分に「Kyrie eleison」と内声が食い込んでくるのである。何かわからないもやっとした違和感が晴れた瞬間だった。その後Groriaでの単語の脱落に気づき、ラインベルガーっていったい...と思ったものである。HochsteinはKyrieの2部構成については触れている。しかしGroriaでの「tibi」の脱落に触れてはいない。う~~ん。

 

 あとCredoの"qui cum patre et filio simul adoratur et conglorificatur 父と子と共に拝みあがめられ"の箇所なのだが、特に81小節目のconglorificaturのフレーズ。何度聞いてもおかしくてしょうがない。なんか箸が転がってもおかしいと言えば変なたとえだが、なんか転がっている。なんか前転してない? だからWebMasterはひそかにこの曲を「でんぐり返し」と呼んでいる。


 ラインベルガーの『ミサ曲 イ長調 作品126』は1881年6月の数日の間に作られた。下書きは6月13日から17日にかけて作成され、清書は6月25日に完成した。当初3声の女声合唱とオルガンのために作られたこの作品は、同年中に出版された。1881年のクリスマス・イブにミュンヘンの諸聖宮廷徒教会の宮廷礼拝堂にて作曲者自身の手によって世界初演が執り行われた。しかしながら初演の際、このミサ曲は当初の形では演奏されなかった。なぜならばランベルガー自らが声部とオルガン以外に、弦楽五部合奏とフルート独奏の器楽アンサンブルを追加したのであった。このような演奏状況に従って、1881年の11月29日にこのバージョンの楽譜は新しく書かれ、『Missa in nativitate Domini(主の降誕ミサ)』と名付けられた。オーケストラ伴奏バージョンのタイトルにはクリスマスへの言及があるにもかかわらず、この作品は典型的な「Pastoral mass(クリスマス・ミサ曲)」ではない。作品はもともとクリスマスに使用することを考慮していなかったものであり、シチリアーノのリズム、ドローンベース、およびこの種の作品の特性が期待されるべきではない。
 フランチスカ・ラインベルガーの日記には記述がないため、このミサ曲の作成時を取り巻く状況はうかがい知ることはできない。ちなみにだが、作曲者自身が男声合唱曲集『Aus deutschen Gauen(ドイツの地から)』に作品番号(125)を割り振るまで、このミサ曲は当初「作品番号」は「125」であった。