ミサ曲テキストに関して

ラインベルガーのミサ曲における問題点

 

おそらく多くの合唱指揮者・合唱団はラインベルガーのミサ曲においては問題があることを認識していないのではないだろうか? 両手からこぼれるほど演奏会でその音楽を聴いたが、その問題点に留意を払っているそぶりはどこの団体も皆無であった。一番のけぞるのは『女声合唱とオルガンのためのミサ曲 変ホ長調 作品155』である。この曲を無自覚にCredoを抜きに演奏していると思われる団体が非常に多い。作曲当時この曲の以前から問題点は指摘されていたし、この曲のCredoに問題があったからこそ、次の『ヘ短調 作品159』にてドイツ・オーストリアで論争が巻き起こったのである。繰り返すが、ラインベルガーのミサ曲は問題が多いのである。これは留意すべき点である。

 

カールス社から出版されている単品の楽譜の序文はドイツ語だから(序文の無いものもある)誰も読んでいないだろうし、あまり言及されていない。最も人気がある作品109 ミサ曲 変ホ長調 Cantus Missaeには英文序文があるが、やはり言及されていない(この曲はガッツリと修正されているにもかかわらずだ)。彼の音楽を収録したほとんどのCDにも解説はない(作品155または作品159を収録したCDには言及されているが)。

 

多くの合唱指揮者(合唱団)はライベルガーは「短く、手ごろで、奇麗で、優しい」から取り上げているのではないだろうか? 合唱指揮者の方々には以下に示す問題点を認識し、その前に立つ合唱団に方々を導いてもらいたいと思うし、その一助になれば願う次第である。

 

筆者はあからさまな欠点があるからと言って、ラインベルガーの音楽を否定するつもりはない。この欠点さえ飲み込み彼の音楽を愛好していきたいと思っている。

 

何が問題点なのか?

 

ラインベルガー幼少のころよりカトリック教会音楽に親しんでいたが、実はラテン語にあまり通じていなかったのである。故に彼の一部宗教音楽には典礼に適していないと「総ドイツセシリア協会」からたびたびの非難がなされていた。それにもかかわらず、多くの作品においてきちんと作ろうとする姿勢が見受けられない。無頓着と言っていいのかもしれない。その典型的な例がミサ曲の通常文から単語やセンテンスの欠落・錯綜しているものが見受けられる。しかもシューベルトとは違い、その欠落部分に統一性はない。多少の傾向は見受けられるが、基本的にはばらばらである。作曲した時の気分で発生したのではないかと思われる。

 

なお筆者調べではあるが、レクイエムを除く合唱用ミサ曲13曲中、欠落の無い作品は 作品159(ヘ短調)、169(ハ長調)、187(ト短調)の三作品のみである。なおこの3曲をそれぞれファースト、セカンド、サード・パーフェクトと呼びたい。作品62(ヘ短調)は女声独唱(または斉唱)のための作品であるが、意図的にミサ通常文を省略してあるので、対象外とする。また彼の出版された3曲のレクイエムについては欠落は見当たらないと思っている。

 

以下に個々の曲の欠落部分を示してみたいと思う。

 

基本的に各曲GloriaとCredoに欠落が見受けられる。テキストの斜体太字黄色部分が該当する。