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ピアノ三重奏曲 Nr.3 in B, op.121

初版表紙
初版表紙

Klaviertrio #3 in B, op.121

 

  1. Allegretto amabille.
  2. Romanze. Andantino.
  3. Scherzo. Allegro.
  4. Finale. Con moto. 

 

 室内楽においてラインベルガーはそれほど一定のジャンルにこだわって取り組んではいない。習作期に20作品を超えて作った弦楽四重奏曲ですら、その後に新たに作ったわずか2曲しか出版していない。ヴァイオリンソナタも2曲。チェロソナタは1曲と、自分が得意としたオルガン曲(ソナタが20曲と他多数)、ピアノ曲(ソナタが4曲とこれまた他多数)からすれば寡作と言っていいだろう。しかしピアノ・トリオに関してはこだわりがあったようで全部で4曲作曲しており、これはピアノソナタに匹敵する。ちなみに彼の室内楽を取り上げったネット上のブログには3曲と解説しているものがいくつか散見するが、これはTHOROFONレーベルの室内楽全集しか参照してないための誤解である。この全集は第4番op.191を省略し、その拡大編曲バージョンのSextett(ピアノ6重奏曲) op.191bしか収録しかおらず、かつちゃんと解説してない事に起因している。

自筆チェロパート譜
自筆チェロパート譜

1878年に書かれたピアノ・トリオ2番 イ長調 op.112のわずか2年後に、ピアノ・トリオ3番 変ロ長調op.121(11880年)は作られている。他の室内楽の頻度からすればこれは早いペースである。全集の校訂者ハン・タイルはこの短期間に自作に取り組んだことは、作曲家は2番の出来に納得がいかなかったからではないかと述べている。実際両曲は拍子や速度設定に類似が見られ、かなり意識してることがうかがえる。

 

#3 Allegretto amabille.    3/4 (#2-Allegro 3/4)

#3 Romanze. Andantino. C (#2-Andantino esspressivo 2/4)

#3 Scherzo. Allegro.       3/4 (#2-Tempo di minuetto (moderato)3/4)

#3 Finale. Con moto.      2/2  (#2-Finale. Allegro con fuoco C)

曲は1880年11月21日から12月26日にかけて作曲された(清書完了の日付は12月27日)。この曲に限らず、作曲家の室内楽作品はハンス・フォン・ビューローや、その他多数の弟子たちにおいて演奏・紹介されていたためヨーロッパだけではなくアメリカにおいても非常に人気があり、盛んに演奏されていたという。アメリカ出身の弟子チャドウィックはボストンにおいて1シーズンに3回耳にしたことを伝えている。

 

1881年1月16日、ラインベルガー家で行われた恒例の日曜音楽会にて披露された。ファニーが義兄に伝えた手紙では、作曲家自身のピアノによることが示唆されている。ヴァイオリンとチェロ奏者は不明。この時期は指の疾患が再発する直前の時期のため、自らが演奏を行ったのかもしれない。

総譜
総譜