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弦楽四重奏曲 Nr.1 in c, op.089

via BSB Mus. ms. 4664
via BSB Mus. ms. 4664

Streichquartet Nr.1 in c op.089

  1. Allegro non troppo
  2. Adagio espressivo
  3. Scherzo: non troppo vivo
  4. Finale: Allegretto

  ラインベルガーはミュンヘン音楽院へ入学する以前、約2年の間キルトフェルトにてチェリストのフィリップ・シュムツァーのもとで室内楽の薫陶を受けている。また音楽院卒業後、フランツ・ラッハナーの元で個人授業を受け、1853-1858年の間に多数の弦楽四重奏曲を始めたとした室内楽作品の習作を残している。全て未発表だが、4楽章構成が5点、3楽章構成が1点、単独楽章が3点。ほかにもチェロソナタ、ピアノトリオなど残している。彼が弦楽四重奏曲を作曲するのは必然だろう。

via Mus.ms. 4695-17-P4 赤囲み「Zum Motiv im letzten Satz des Florentinerquartetts フィレンツェ弦楽四重奏団最終楽章の主題とした」
via Mus.ms. 4695-17-P4 赤囲み「Zum Motiv im letzten Satz des Florentinerquartetts フィレンツェ弦楽四重奏団最終楽章の主題とした」

 早や書きのラインベルガーにしては珍しく、この曲は5ヶ月という比較的長期のスパンで作曲が行われた。1875年3月の終わりに作曲を開始し、同年7月14日に完成している。第一楽章「Allegro non troppo」は3月20日、第二楽章「Adagio espressivo」は不明。第三楽章「Scherzo: non troppo vivo」が6月21日。そして第四楽章「Finale: Allegretto」は7月14日に清書が終わっている。大概室内楽は取り掛かってから一月ぐらいで完成させるのだが、このとき36歳、右手の疾患の影響だろうか? それとも他の要因があったのであろうか。

 

 1862年8月8日に作曲された自作の歌曲「Mir brennt eine Flamme im Herzen tief わが心の奥深くで燃える炎」(JWV136-2・未出版)のヴォーカル部分冒頭8小節が、フィナーレの47小節から184小節に引用されている。あまり引用を行わないラインベルガーにしては珍らしい作品といえよう。「Mir brennt eine Flamme im Herzen tief わが心の奥深くで燃える炎」の直筆楽譜の上には「フィレンツェ弦楽四重奏団最終楽章の主題とした」と書かれている。

 

 

 初演は1876年2月1日アムステルダムにてフィレンツェ弦楽四重奏団によって行われた。四重奏団のリーダー、ジャン・ベッカー(第一ヴァイオリニスト。ラインベルガーは初版出版譜を彼に献呈した)は2月から3月にかけて初演のルクセンブルクを皮切りに、フランクフルト・アム・マイン、リューベック、ブレーメン、ハンブルグそしてベルリンとドイツの5つの都市で予定されていた公演が成功した旨を手紙で報告した。ライプツィッヒ、ドレスデン、ウィーンでも行われた。作品はライプツィッヒのロイッカールトから同年に第一稿が出版された。

 

 作品は完成の1ヵ月後、1875年2月25日に4手ピアノ用に編曲し、おそらく翌年にこれもまた出版された。この作品の詳細な分析はベルント・エデルマンによって行われた。とりわけ、最終楽章はワーグナーのトリスタン前奏曲に関して言及されている。