参照される方々へ。弊サイトのデータをもとに解説を書かれる場合は出典として弊サイト名をお記し下さい。


Thema mit Veränderungen, op.93

主題と変奏 作品93

 1875年の『弦楽四重奏曲 1番 ハ短調 作品89』と1886年の『同2番 ヘ長調 作品147』間にもう1曲弦楽四重奏曲を作っている。

 

 ふたつの弦楽四重奏曲とは構成が違い、チェロによって提示された8小節の主題と50曲の変奏曲で構成された単一楽章『Thema mit Verändurunge op.93 主題と変奏 作品93』は1875年12月13日に完成している。現存している清書には特徴があり、8小節単位の変奏曲で書き進められ、4ページ目に至り第9変奏の2小節目でいったん放棄されている。続くページから改めてまったく同じ題名・主題で書き直されている。ただし修正稿では第6変奏は完全に書き直されて第49変奏までつづいている。最終変奏のCapriccoはそれまでの8小節単位の形式を大きく逸脱し、56小節におよんでいる。当時からすれば古い形式のパッサカリア(もしくはチャッコーナ)といっていいかもしれない。また修正稿にはコントラバス用の行が各段の下に小さめの音符で追記されている。コントラバスがどの時点で追加されたのかはわからない。コントラバスパートは無視されて、1876年にフォアベルクから弦楽四重奏曲として出版された。現在入手可能なCarus版ではコントラバスパートを小さめの音符で表示しア・ドリブ・パートとして四重奏の構図を壊さずに編集している(すんませんCarus版持ってないんです)。作品は作曲家の生徒、ジョゼッペ・テッラブッジョへ献呈された。

 

第6変奏 第1稿 via BSB Mus.ms. 4567(以下同)
第6変奏 第1稿 via BSB Mus.ms. 4567(以下同)

修正された第6変奏。コントラバスパートが追加されていることが確認できる
修正された第6変奏。コントラバスパートが追加されていることが確認できる


修正稿第1ページ目。赤線部分に『Ein Studienwerk (教育目的の作品)』第1稿に引き続き記入されている
修正稿第1ページ目。赤線部分に『Ein Studienwerk (教育目的の作品)』第1稿に引き続き記入されている

 ラインベルガーによる題名には『Ein Studienwerk (教育目的の作品)』とも含まれている。ラインベルガーが勤めていた音楽院の日報によると、ミュンヘン王立音学院での教授活動、またはより正確には彼が4半期の生徒に与えた変奏技法の課題への寄与として変奏曲は生みだされている。彼は1875年10月9日から1876年1月12日の間をまるまる使い、明らかに作品93の基礎を形成した同様の10小節のト短調の主題を使用した変奏曲を使用している。作品93の清書原稿にはラインベルガーの筆ではないマニュスクリプトも付録されている。

 

 このような背景により、作品はコンサートホールのためよりは幾分学習用として「入門編の一種で彼のミュンヘンでの教育活動の範囲外の変奏技術の雛形」と考えられる。

  

 作品の批評は見つかっていない。四重奏または五重奏として実行された事を示唆する批評や広告も見つかっていない。この作品もピアノ連弾用に編曲され、直筆原稿に作成された日付はなく、おそらく1876年中に出版された。

フォアベルクからの初版。弦楽四重奏となっている
フォアベルクからの初版。弦楽四重奏となっている
Carus版。コントラバスはオプションとしている
Carus版。コントラバスはオプションとしている
授業用として用意された10小節単位の変奏曲。同定はされていないがWoO89もしくはWoO90と目されている
授業用として用意された10小節単位の変奏曲。同定はされていないがWoO89もしくはWoO90と目されている